「こんなわがままな私でも、魔法をかけてくれますか?」
どんな立場でも高みを目指し突き進んでいくアイドル。
そんな律子にかけられた魔法が、たくさん詰まったSS合同誌です。
ご好評いただき、完頒いたしました。
再頒が決まり次第、こちらにてお伝え致します。
あとがきに関するおわびと訂正
律子、風邪を引く
吉原睡眠
ぴぴぴ、と控えめな音がして、私は体温計の画面に目をやった。朝に比べれば下がっているけれど、いまだに体温は38度を超えている。体温計をベッドサイドに置いて、中途半端なところにあった毛布を肩まで手繰り寄せた。
振り返ってみれば、昨日の私は朝からハイになっていたと思う。アイドルとして立てなかった大型野外フェスのステージに、竜宮小町のプロデューサーとして立つことができた。みんなは最高のパフォーマンスで会場を沸かせてくれたし、ファンだけじゃなく業界での評判も良かった。だからこそ、この機会を逃さずにしっかり営業をかけなくちゃいけないのに。
アイドルやってもいいですか?
霧島義隆
アイドル。キラキラした衣装を着て、華やかなステージでたくさんのファンを前にして歌い、踊る。多くの人にとって敬愛、憧憬の対象。
秋月律子。目下高校三年生。成績は……悪くない。どちらかというと地味で、委員長気質。取り立てて目立ったところはない、ただの高校生。
どう考えても取り合わせがいいとは言えない組み合わせだったはずなのに、なぜか今、私秋月律子は、アイドルをやっている──。
アフターマス
ニノウデ
結構一緒に過ごしたもので、折り入ってお話が──なんて改まる必要のないくらいに、二人の時間は有り余っているような気がしていた。
貰い物だかジャンク品だかのかき氷器のハンドルをかわりばんこに回したら、暑気払いのつもりが逆に汗をかいた真夏のある日。
器に盛ったかき氷を崩しながら、私はポツリとつぶやいた。
「受験しようかと思ってるんですよね」